Monday 7 January 2008

「何かが叩いた」(トマス・ハーディ)

何かがおれの部屋の窓を叩いた
 風も雨もその兆しすらないのに
そしておれは暗がりに見た
 やつれはてた「愛する女」の顔を。

「ああ、もう待ちくたびれちゃった」と彼女はいった
 「夜、朝、正午、午後。
私のさびしいベッドはすごく冷たい
 あなたがすぐに来てくれると思ってたのに!」

おれは立ち上がり窓ガラスに近づいた、
 ところがすると消えてしまったのだ、彼女は。
ただ一匹の青ざめた蛾が、ああ、
 おれのために窓を叩いてくれただけ。

(Thomas Hardy, "Something Tapped")