Tuesday 22 January 2008

百姓年代記(ウォレス・スティーヴンズ)

偉人とは何だ? すべての人間は勇敢だ。
すべての人間が忍耐する。偉大な船長といっても
偶然に選ばれた者でしかない。結局、もっとも荘厳な埋葬
とは百姓年代記。
        人は他人により賞讃
されるために生きる、したがってすべての人間は
すべての人間に賞讃されるために生きる。諸民族は
諸民族により賞讃されるために生きる。人種は勇敢だ。
人種は忍耐する。人種の葬儀の壮麗は
個々の壮麗を多数集めたものであり
人類の年代記とは
百姓年代記の総和なのだ。
        偉人たちーー
それはちがう話。かれらは現実によって構成
されながらも現実を超えた人々だ。かれらは
人間から作られた架空の人物なのだ。
かれらも人間だが人工的な人間だ。かれらは
無であり、それを信じること
などできず、ありきたりな主人公より、もっともモリエール
らしい神話としてのタルチュフより以上のものであり、
安易な投影はとっくに禁止されている。

バロック詩人は彼のことをウェルギリウスとおなじ
くらい不動の人と見るかもしれない、抽象的な。
だが自分で彼を見てごらんなさい、あの架空の人物を。彼は
カフェにすわっているかもしれない。テーブルには田舎風チーズと
パイナップルの皿があるかもしれない。きっとそうにちがいない。

(Wallace Stevens, Paisant Chronicle)