Friday 25 January 2008

月光(ギヨーム・アポリネール)

月は流れる蜜となって狂人の唇にふれる
果樹園も村々も今夜は大食いだ
星たちはなかなか上手に蜜蜂を演じている
葡萄棚から滴り落ちる光の蜜を集めて
いま空からやさしく降ってくる
光はそのまま蜜なのだ
ところで身を隠した僕はきわめて甘美な事件を理解する
この北極星という蜜蜂の火の針は恐ろしい
僕の両手に期待はずれの光を持たせ
その月の蜜を風の薔薇(羅針盤)から奪ったのはそいつでした

(Guillaume Apollinaire, Clair de lune)