Friday 11 January 2008

抽象の庭(ハート・クレイン)

枝についたままのその林檎は彼女の欲望だーー
宙づりで輝く、太陽の模倣者、
枝が彼女の息を止め、彼女の声は、
頭上の枝の傾斜と上昇の中で
無言で、はっきりと発せられ、彼女の目をうるませる。
彼女は木とその緑色の指の囚人。

それで彼女は自分はその木なのだと夢見るようになる、
風が彼女を所有し、その若い血管を編み、
空とそのすばやい青にむかって彼女をさしだす、
彼女の両手の熱を陽光に溺れさせながら。
彼女にはない、足下の草と影を超えては、
記憶も、怖れも、希望も。

(Hart Crane, Garden Abstract)