何かがおれの部屋の窓を叩いた
風も雨もその兆しすらないのに
そしておれは暗がりに見た
やつれはてた「愛する女」の顔を。
「ああ、もう待ちくたびれちゃった」と彼女はいった
「夜、朝、正午、午後。
私のさびしいベッドはすごく冷たい
あなたがすぐに来てくれると思ってたのに!」
おれは立ち上がり窓ガラスに近づいた、
ところがすると消えてしまったのだ、彼女は。
ただ一匹の青ざめた蛾が、ああ、
おれのために窓を叩いてくれただけ。
(Thomas Hardy, "Something Tapped")