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Wednesday, 16 January 2008

大いなる西部の平原(ハート・クレイン)

プレーリー・ドッグたちの小さな声は疲れを知らない...
かれらはフレーを三唱する
駅馬車、馬上の人、プルマン寝台車に、おなじように、
まるで月に対するように惜しみなく。

そしてフィフィのリボンとプードルらしい気楽さが
映画の女王、ロッティ・ハニーデューの膝にちょこんと
すわってかれらのそばを疾走してゆく、
法律家たちとネヴァダ州にむかって。

そしてさらにどれだけ多くがかれらには見えないことか!
まったく、時間は足りなすぎだ、
世界はあまりに早く動いている!
かれらは絹の中に巣穴を掘ったりはしないーー
でもトマホーク(斧)はよく知っている。

そう、古い記憶がいきいきと甦ってくる。
みじめな吠え声がときには挨拶してくれたものだ
ガラスに鼻を押しつけて。

(Hart Crane, The Great Western Plains)

Saturday, 12 January 2008

忘却(ハート・クレイン)

忘却は歌に似ている、
拍子や小節から解放されてさまよう歌に。
忘却は鳥のようだ、二つの翼が和解し、
ひろげられたままじっとしているーー
倦むことなく風に乗ってゆく鳥だ。

忘却とは夜の雨、
あるいは森の古い一軒家、ーーあるいは一人の子供。
忘却は白い、ーー枯れ木のように白い、
そしてそれはシビル(巫女)を驚かせて予言させる、
あるいは神々を埋葬する。

おれはずいぶんいろんな忘却を覚えている。

(Hart Crane, Forgetfulness)

仏陀に(ハート・クレイン)

あなたはそんなあれこれの問いの完全な外にいる、
あなたの鈴(りん)の磨かれた底は
天を駈けるよう教えられている、そしてあなたは
他の者たちが抑えている欲望の接平面(タンジェント)を知っている。

(Hart Crane, To Buddha)

水浴びする人(ハート・クレイン)

乳のような海の岸辺に二人の象牙色の女がいる、ーー
夜明け、貝殻の薄い色がせわしなく
黒い稜線をふちどりゆらめいている。ーー
夢見る人がこれを見るかもしれない、そして目覚め耳をそばだてるのだが、
音はしない。ーー鳥の声すらしない。
ただ単純なさざ波がひらひらし、撫で、浮遊する。ーー
海の白いのどもとの平坦な百合の花びら。

ウェヌスは泡をつらぬいて光へと出現したのだとかれらはいう、
でも間違いだ... 人に視覚が与えられる以前に
彼女はそんなしずかな水のうちに現われ、沈黙のうちに
育まれたのだ、祝福された美も、呪われた美も。

(Hart Crane, The Bathers)

Friday, 11 January 2008

抽象の庭(ハート・クレイン)

枝についたままのその林檎は彼女の欲望だーー
宙づりで輝く、太陽の模倣者、
枝が彼女の息を止め、彼女の声は、
頭上の枝の傾斜と上昇の中で
無言で、はっきりと発せられ、彼女の目をうるませる。
彼女は木とその緑色の指の囚人。

それで彼女は自分はその木なのだと夢見るようになる、
風が彼女を所有し、その若い血管を編み、
空とそのすばやい青にむかって彼女をさしだす、
彼女の両手の熱を陽光に溺れさせながら。
彼女にはない、足下の草と影を超えては、
記憶も、怖れも、希望も。

(Hart Crane, Garden Abstract)