偉人とは何だ? すべての人間は勇敢だ。
すべての人間が忍耐する。偉大な船長といっても
偶然に選ばれた者でしかない。結局、もっとも荘厳な埋葬
とは百姓年代記。
人は他人により賞讃
されるために生きる、したがってすべての人間は
すべての人間に賞讃されるために生きる。諸民族は
諸民族により賞讃されるために生きる。人種は勇敢だ。
人種は忍耐する。人種の葬儀の壮麗は
個々の壮麗を多数集めたものであり
人類の年代記とは
百姓年代記の総和なのだ。
偉人たちーー
それはちがう話。かれらは現実によって構成
されながらも現実を超えた人々だ。かれらは
人間から作られた架空の人物なのだ。
かれらも人間だが人工的な人間だ。かれらは
無であり、それを信じること
などできず、ありきたりな主人公より、もっともモリエール
らしい神話としてのタルチュフより以上のものであり、
安易な投影はとっくに禁止されている。
バロック詩人は彼のことをウェルギリウスとおなじ
くらい不動の人と見るかもしれない、抽象的な。
だが自分で彼を見てごらんなさい、あの架空の人物を。彼は
カフェにすわっているかもしれない。テーブルには田舎風チーズと
パイナップルの皿があるかもしれない。きっとそうにちがいない。
(Wallace Stevens, Paisant Chronicle)