Sunday 26 October 2008

あるとき大洋が私にいった(スティーヴン・クレイン)

あるとき大洋が私にいった。
「見ろ!
あそこの海岸に
女がいるだろう、泣いている。
ずっと彼女を見ていたんだ。
おまえは行って彼女にこう伝えてくれ、----
彼女の恋人はおれが
涼しい緑色のホールに横たえた。
宝物のような黄金の砂があり
珊瑚の赤の柱がある。
二匹の白い魚が彼の棺を守っている、と。

「そう彼女に伝えて
さらにいってくれ、----
海の王もまた
泣いているのだ、老いた、途方にくれた男は。
せわしないいくつもの運命が
彼の両手に屍を積み上げ
やがて彼は手にあまるおもちゃをもらった
子供のように立ちつくす」

(Stephen Crane, "The ocean said to me once")