Monday 8 December 2008

ある精霊が急いだ(スティーヴン・クレイン)

ある精霊が急いだ
夜の空間を横切って。
急ぎつつ、彼は呼んだ。
「神よ! 神よ!」
黒い死がぬかるむ
谷間を抜けて行った。
あいかわらず呼びながら。
「神よ! 神よ!」
そのこだまが
岩の裂け目や洞窟から
彼をからかった。
「神よ! 神よ! 神よ!」
すばやく彼は広々とした野原に出て
進んだ、さらに呼びかけながら。
「神よ! 神よ!」
だがやがて、彼は悲鳴を上げたのだ。
怒り、否認した。
「ああ、神なんているものか!」
すばやい手、
空からの一太刀が、
彼を打ち、
たちまち彼は死んでいた。

(Stephen Crane, "A spirit sped")