けれども貝殻の上ではなく、彼女は旅立つ、
古代的に、海にむかって。
けれども最初に見つけた海藻の上で
彼女はきらめく海面を走る、
音もなく、ただもう一つの波のように。
彼女もまた不満であり
両腕には紫色の何かをもっているかもしれない、
塩っぽい港に飽いて、
海の遠い内奥の
海水と吠え声を無性に求めている。
風が彼女を加速させる、
彼女の両手と
水のしたたる背中に吹きつけて。
彼女は雲にふれる、それこそ
海をわたる彼女の円環のめざす場所。
とはいえこんなものは痩せた芝居にすぎない
あわてふためく水の輝きの中で、
彼女のかかとが泡立つーー
後の時代のより黄金色のヌードが
そんな風に
海の緑の華やぎの中心で
より強烈な静寂の中を進むのとはちがう、
運命の使用人が、
かぐわしい海流をわたって、休むことなく、
回復不能な彼女の道を行くだけ。
(Wallace Stevens, The Paltry Nude Starts on a Spring Voyage)