Monday 31 December 2007

見すぼらしいヌードが春の航海を始める(ウォレス・スティーヴンズ)

けれども貝殻の上ではなく、彼女は旅立つ、
古代的に、海にむかって。
けれども最初に見つけた海藻の上で
彼女はきらめく海面を走る、
音もなく、ただもう一つの波のように。

彼女もまた不満であり
両腕には紫色の何かをもっているかもしれない、
塩っぽい港に飽いて、
海の遠い内奥の
海水と吠え声を無性に求めている。

風が彼女を加速させる、
彼女の両手と
水のしたたる背中に吹きつけて。
彼女は雲にふれる、それこそ
海をわたる彼女の円環のめざす場所。

とはいえこんなものは痩せた芝居にすぎない
あわてふためく水の輝きの中で、
彼女のかかとが泡立つーー
後の時代のより黄金色のヌードが
そんな風に

海の緑の華やぎの中心で
より強烈な静寂の中を進むのとはちがう、
運命の使用人が、
かぐわしい海流をわたって、休むことなく、
回復不能な彼女の道を行くだけ。

(Wallace Stevens, The Paltry Nude Starts on a Spring Voyage)