Saturday, 7 June 2008

四阿(ロルカ)

不動の噴水の上で
死んだ大きな鳥が眠っている。

恋人ふたりが口づけをかわす
夢の冷たい結晶のあいだで。

「指輪、指輪をちょうだい!」
「自分の指がどこにあるのかわからない」
「抱いてくれないの?」
「腕は冷たい十字に組んだまま
ベッドに置いてきた」

葉叢のあいまを這ってゆくのは
老いた月の光

(Federico García Lorca, Glorieta)

Friday, 6 June 2008

フアン・ラモン・ヒメネス(ロルカ)

 無限の白の中、
雪、カンショウ、塩の平原で、
彼は自分の幻想を見失った。

 白という色が行く、
鳩の羽の
無言の絨毯の上を。

 目を欠き身振りもなく
じっとして彼は夢に苦しんでいる。
でも内部は震えているのだ。

 無限の白の中、
なんという純粋で大きな傷口を
彼の幻想は残していったことか!

 無限の白の中。
雪。カンショウ。塩の平原。

(Federico García Lorca, Juan Ramón Jiménez)

Thursday, 5 June 2008

ヨーロッパにおける中国の歌(ロルカ)

 私の名付け子であるイサベル・クララに

 扇をもった
セニョリータが、
冷たい川の
橋にむかう。

 フロックコートを着た
男たちが、
手すりのない橋を
見つめている。

 扇をもち
フリルをつけた
セニョリータが、
夫を探している。

 男たちは
みんな結婚している、
白い言葉を話す
背の高い金髪の女たちと。

 西のほうでは
コオロギが歌っている。

 (セニョリータは
緑の中を歩いている。)

 花の下で
コオロギが歌っている。

 (男たちは
北にむかって行く。)

(Federico García Lorca, Canción china en Europa)


 

Wednesday, 4 June 2008

自殺(ロルカ)

 (たぶんそれはきみが
 幾何学をちゃんと知らなかったから)

 若者は自分を忘れた。
朝の十時だった。

 彼の心臓はあふれていった
折れた翼とぼろ切れの花で。

 もはや口にはほんの一語しか、
残っていないことに気づいた。

 そして手袋をはずすと、
彼の両手からはなめらかな灰が落ちた。

 バルコニーからは塔がひとつ見えた。
彼は自分がバルコニーであり塔だと感じた。

 まちがいなく彼は見たはずだ、木箱の中に
閉じこめられた時計がどんなふうに彼を見つめているかを。

 はりつめしずかな彼の影を、
白い絹張りの長椅子に見たはず。

 それから緊張した、幾何学的な若者は、
斧で鏡を叩き割った。

 それを割るとき、影は盛大に噴き出し、
幻想の寝室を水びたしにした。

(Federico García Lorca, Suicidio)

枯れたオレンジの木の歌(ロルカ)

 カルメン・モラレスに

 木こりよ。
私の影を伐って。
果実をつけない自分を見ることの
苦しみから解放して。

 なぜ私は鏡に囲まれて生まれたのだろう?
日は私のまわりをめぐる。
そして夜は私を写しとる
彼女のすべての星をもって。

 私は自分を見ることなく生きたい。
すると蟻やタンポポの冠毛のことを
私は自分の葉であり小鳥であると
夢見ていられるのに。

 木こりよ。
私の影を伐って。
果実をつけない自分を見ることの
苦しみから解放して。

(Federico García Lorca, Canción del naranjo seco)

Tuesday, 3 June 2008

回廊(ロルカ)

男の子。ぼくはね、グリフォン鳥の
羽根を探しに行く。
こびと。ぼうや、そんな計画なら
手伝ってあげるわけにはいかないよ。
ーー民謡から

 タン、タン

風は死んだ。
動かなくなり、しわくちゃになった。

松の木が土に横たわっている。
その影は立ち上り、震えている!

 ぼくーきみー彼
(ひとつの平面上に)

 タン、タン

(Federico García Lorca, Pórtico)

月たちの遊び(ロルカ)

月はまんまる。
そのまわりに、鏡の
水車。
そのまわりに、水の
水車。
月は薄く剥がれる
白金のパンのように。
月は
はらはらと葉を落とし
たくさんの月になる。
泉の群れが
空を飛ぶ。
それぞれの泉に
死んだ月が落ちている。
月は
澄んだ奔流の中で
光の杖となる。
月は、
割れた大きなガラス窓のように、
海に落ちる。
月が
無限の屏風を
通過する。
でも「月」は? でも「月」は?

(空では、
残されているのは
小さな結晶たちが作る車輪だけ。)

(Federico García Lorca, Juego de lunas)