Saturday, 5 January 2008

眠る一人の老人(ウォレス・スティーヴンズ)

二つの世界が眠る、眠っている、いま。
一種の荘厳さの中で無言の感覚がそれらにとりついている。

自己と地球ーーあなたのさまざまな思考、感情、
あなたの信念と不信、あなた特有の謀略のすべて。

あなたの赤みがかった栗の木の赤、
川の動き、Rという川のねむたい動き。

(Wallace Stevens, An Old Man Asleep)

ローマの壁ブルーズ(W・H・オーデン)

ヒースの荒野の上に吹きわたるのは濡れた風
おれのチュニック(上衣)にはシラミ、鼻は風邪。

雨がぱらぱら落ちてくる、空から。
おれは壁の兵士、どうしてこうなったものやら。

霧が硬い灰色の石を這い上がってきてるね、
あの娘はトゥングリアにいる、おれは独り寝。

アウルスが彼女につきまとってるって
あいつは気に入らない、面も気に食わない。

ピソのやつはキリスト教徒で魚を礼拝する
どんなに望んだところでキスまでは行かないな。

あの娘は指輪をくれたがとっくにすっちまったよ
あの娘に会いたいよ、給料さっさとくれよ。

そのうちおいらも片目の老兵士
そうなりゃぼんやり空を見上げるだけ。

(W.H.Auden, Roman Wall Blues)

アメリカ的崇高(ウォレス・スティーヴンズ)

どうやって耐えるというんだ
崇高をじっと見つめるなんて、
モッカーどもと対決するなんて、
ミッキー・モッカーたちと
編み上げられたペアたちと?

ジャクソン将軍が
彫像のためにポーズをとったとき
彼はどんな気分になるかを知っていた。
はだしで目をぱちぱちしながら
うつろな心で歩いてゆくか?

でもするとどんな気分になる?
人は天候だとか、
風景や何かにはいずれは慣れる。
すると崇高が
精神そのものへと下りてくる、

精神と空間、
からっぽの精神が
空虚な空間に。
どんな葡萄酒を飲めばいい?
どんなパンを食えばいい?

(Wallace Stevens, The American Sublime)

Friday, 4 January 2008

事物の表面について(ウォレス・スティーヴンズ)

  I
私の部屋では、世界は私の理解を超えている。
けれども散歩にゆくと世界とは三つか四つの丘と雲でできているのだということがわかる。

  II
私のバルコニーから、私は黄色い大気を調査する、
自分で書いたことだがこんな言葉を読むのだ、
「春とは美しい女が服を脱ぐところに似ている」

  III
金色のその樹は青い。
歌手はマントを頭からかぶった。
月はそのマントの襞の中にある。

(Wallace Stevens, Of the Surface of Things)

ブランシュ・マッカーシー(ウォレス・スティーヴンズ)

空の恐ろしい鏡に映してみなさい
この死んだガラスではだめだ、それには
ただ表面しか映らないからーー曲がる腕、
傾く肩と探るような目。

空の恐ろしい鏡に映したまえ。
ああ、目に見えないものにぶつかって曲がり、
降りてくる夜のシンボルたちに寄りかかり、
通過する啓示の輝きを探すことだ!

空の恐ろしい鏡に映すのだ。
不在の月がどんな風にきみの暗い自己の林間の空き地で
待っているかを見るがいい、そして星々の翼がどんな風に、
想像もつかない茂みから、上方に、飛び立つかを。

(Wallace Stevens, Blanche McCarthy)

秘密(ピエール・ルヴェルディ)

 空っぽの鐘
 死んだ鳥たち
すべてが眠ってしまった家の中
  九時

地球はじっと動かずにいる
 誰かがため息をついたみたい
木々は微笑しているようで
 水が一枚一枚の葉先でふるえている
  雲がひとつ夜を横切る

玄関の外で男が歌う

  窓が音もなく開かれる

(Pierre Reverdy, Secret)

鐘の音(ピエール・ルヴェルディ)

 すべての明かりが消えた
風が歌いながら通過する
  木々は身をふるわす
動物たちは死んだ
もう誰もいない
  ごらん
星たちは輝くのをやめた
  地球はもう回らない
頭が傾いた
  髪が夜を掃いている
最後の鐘塔が立ちつくしている
  深夜の鐘が鳴る

(Pierre Reverdy, Son de cloche)