年とは何か?
何が私たちの無垢で
何が罪なのか? 全員が
裸でさらされ、守られている者などいない。どこから
勇気はやってくる? この答えられない問い、
確固とした疑念ーー
声なく呼びかけ、 聞こえない応答にじっと耳を傾けているーーが
不幸、たとえ死においてすら、
他人たちを励まし
敗北においては、魂をゆさぶって強くしてくれる。深く
見てよろこんでいる者、死すべき
運命に接近し、その囚われの状態においても
裂け目をみたす海のように
自分自身以上に高く立ち上がる、
自由になろうとして戦っているものの、
そうはなれず、それでも戦いに敗れることに
また持続を見出している。
それで、強く感じる者ほど、
行いをつつしむ。歌うにつれて
いっそう立ち上がるその鳥は
姿勢を正し鋼のように強くする。囚われの
身ではあるが、鳥は力強い歌声で
こういうのだ、満足など卑しい、
一方、よろこびとは何と純粋なものか。
これが死への歩み
これが永遠。
(Marianne Moore, What are Years?)
Friday, 26 February 2010
Sunday, 25 January 2009
酔いたまえ(ボードレール)*
つねに酔っていなくてはならない。すべてはそれにかかっている。それだけが問題だ。きみの肩を砕き、きみを地面にむかって打ちのめす<時>の恐るべき重荷を感じずにすませるためには、休みなく酔っていなくてはならない。
でも、何に? 酒でも、詩でも美徳でも、それはお好み次第。ともかく、酔いたまえ。
(Charles Baudelaire, Enivrez-vous)
(これからしばらく、いくつかの訳詩を再掲することがあります。タイトルに*がついているものがそれ。過去ログのアーカイヴから消してしまったので、整理のためです。)
でも、何に? 酒でも、詩でも美徳でも、それはお好み次第。ともかく、酔いたまえ。
(Charles Baudelaire, Enivrez-vous)
(これからしばらく、いくつかの訳詩を再掲することがあります。タイトルに*がついているものがそれ。過去ログのアーカイヴから消してしまったので、整理のためです。)
Wednesday, 21 January 2009
「正義の人を作ったことがありますか?」(スティーヴン・クレイン)
「あなた、正義の人を作ったことがありますか?」
「おお、三人作ったよ」と神が答えた、
「だが二人は死んでしまってね
三人めは---
耳をすませ! 耳をすませ!
そうすれば彼の敗北の第三番も聞こえる」
(Stephen Crane, "Have you ever made a just man?")
「おお、三人作ったよ」と神が答えた、
「だが二人は死んでしまってね
三人めは---
耳をすませ! 耳をすませ!
そうすれば彼の敗北の第三番も聞こえる」
(Stephen Crane, "Have you ever made a just man?")
少しばかりのインクじゃないか! (スティーヴン・クレイン)
少しばかりのインクじゃないか!
こんなもの問題にもならないだろう?
空も、ゆたかな海も、
冷淡な平野や丘も、
こうしたすべての本の咆哮を聞いている。
だがそんなものは少しばかりのインクだ。
何だって?
おれがこうしたガラクタを身につけた神だというのか?
おれの悲惨は短白衣を着た阿呆どもの
秩序ある歩行を餌食にできるというのか?
それでは光のファンファーレは?
あるいはよく知った真偽の
計りすました説教壇には?
これが神か?
だったら、地獄はどこだ?
血の汚染から生えてきた素性の知れない
キノコでも見せてくれ。
そのほうがましだ。
神はどこにいる?
(Stephen Crane, A little ink more or less!)
こんなもの問題にもならないだろう?
空も、ゆたかな海も、
冷淡な平野や丘も、
こうしたすべての本の咆哮を聞いている。
だがそんなものは少しばかりのインクだ。
何だって?
おれがこうしたガラクタを身につけた神だというのか?
おれの悲惨は短白衣を着た阿呆どもの
秩序ある歩行を餌食にできるというのか?
それでは光のファンファーレは?
あるいはよく知った真偽の
計りすました説教壇には?
これが神か?
だったら、地獄はどこだ?
血の汚染から生えてきた素性の知れない
キノコでも見せてくれ。
そのほうがましだ。
神はどこにいる?
(Stephen Crane, A little ink more or less!)
Friday, 16 January 2009
秋の別れ(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
ツグミの呼び声はすでに聴いていた
川の老いた水とともに、
あるいは南のゆるやかな
オリーヴの木々のガラスの輝きとともに。
そのとき、死ぬはずがないと思った
海によって
運ばれた母音
明るい母音をあんなにも愛した人が
ーーあるいは秋、
それが栗の木の燃えさかる
炎の中で死ぬとは
羊の群れの夢のようなたゆたいや
疲れた心の女たちのまなざしのうちで、
それは折れた枝に似ていた
ーー露の姉妹である枝たちに。
(Eugénio de Andrade, Despedida do outono)
川の老いた水とともに、
あるいは南のゆるやかな
オリーヴの木々のガラスの輝きとともに。
そのとき、死ぬはずがないと思った
海によって
運ばれた母音
明るい母音をあんなにも愛した人が
ーーあるいは秋、
それが栗の木の燃えさかる
炎の中で死ぬとは
羊の群れの夢のようなたゆたいや
疲れた心の女たちのまなざしのうちで、
それは折れた枝に似ていた
ーー露の姉妹である枝たちに。
(Eugénio de Andrade, Despedida do outono)
Sunday, 11 January 2009
少女にとって(スティーヴン・クレイン)
少女にとって
海は青い牧場
小さな泡の人々がにぎやかに
歌っていた。
難破した水夫には
海は死んだ灰色の壁
この上なくからっぽで
それでもその上には、宿命の時が来たとき
書かれたのだ
自然の暗い憎悪が。
(Stephen Crane, "To the maiden")
海は青い牧場
小さな泡の人々がにぎやかに
歌っていた。
難破した水夫には
海は死んだ灰色の壁
この上なくからっぽで
それでもその上には、宿命の時が来たとき
書かれたのだ
自然の暗い憎悪が。
(Stephen Crane, "To the maiden")
Tuesday, 6 January 2009
微笑、ふたたび(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
きみは去って行った、この詩のすぐまえの
たった四行のうちに。
あるいは去ったのはきみの微笑、なぜならきみは
いつもきみの微笑の中に住んでいたから、
木々の葉に降る緑の雨だ、きみの微笑は、
手首の脈の羽ばたきだ、きみの微笑は、
そしてその味、唇の上の
その光の熱さだ、唇が街路における
太陽のつぶやきであるときの、きみの微笑は。
(Eugénio de Andrade, O sorriso, outra vez)
たった四行のうちに。
あるいは去ったのはきみの微笑、なぜならきみは
いつもきみの微笑の中に住んでいたから、
木々の葉に降る緑の雨だ、きみの微笑は、
手首の脈の羽ばたきだ、きみの微笑は、
そしてその味、唇の上の
その光の熱さだ、唇が街路における
太陽のつぶやきであるときの、きみの微笑は。
(Eugénio de Andrade, O sorriso, outra vez)
フリージア(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
故国には少しは意味がある
それについて話す時にそれが
私たちに口づけしてくれる口であるなら、
その子音のうちに運んでくれるのは
麦、蝉、
魂と、肉体と、空気の
振動、
あるいはまた家の中を突き抜ける光
フリージアとともに
そしてね、ともだちよ、それが心を軽くしてくれるんだ。
(Eugénio de Andrade, Frésias)
それについて話す時にそれが
私たちに口づけしてくれる口であるなら、
その子音のうちに運んでくれるのは
麦、蝉、
魂と、肉体と、空気の
振動、
あるいはまた家の中を突き抜ける光
フリージアとともに
そしてね、ともだちよ、それが心を軽くしてくれるんだ。
(Eugénio de Andrade, Frésias)
Sunday, 4 January 2009
たそがれに(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
肉体を離れて光が
這ってゆく、
雨と見分けがつかなくなって。
冷えてきた、カモメたちは
岩場で体を寄せ合う。
猫は丸くなって夢を見る。
私は一冊の本を取り上げる、すると突然
ひとりの子供が詩行から落ちる。
死んだ子供だ。
(Eugénio de Andrade, Ao crepúsculo)
這ってゆく、
雨と見分けがつかなくなって。
冷えてきた、カモメたちは
岩場で体を寄せ合う。
猫は丸くなって夢を見る。
私は一冊の本を取り上げる、すると突然
ひとりの子供が詩行から落ちる。
死んだ子供だ。
(Eugénio de Andrade, Ao crepúsculo)
Friday, 2 January 2009
ファンゥのノクターン(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
言葉づたいに
夜が上がってゆく
もっとも高い枝まで。
そして歌う
一日のエクスタシーを。
(Eugénio de Andrade, Nocturno de Fão)
夜が上がってゆく
もっとも高い枝まで。
そして歌う
一日のエクスタシーを。
(Eugénio de Andrade, Nocturno de Fão)
家の変容(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
空気の石を積み上げて建ててゆくのだ
ただ詩の中にしかない私の家は。
家は眠り、風の中で夢見る
突然訪れたマストになる喜び。
繊細な体が震えるそのように、
家も震える、船も震える。
カモメが一羽飛ぶ、もう一羽、もう一羽、
家はがまんできなくなって、やはり飛び立つ。
ああ、いつか家は森になるだろう、
その木陰に私は泉を見つけるだろう、
そこでは水音だけが唯一のしずけさ。
(Eugénio de Andrade, Metamorfoses da casa)
ただ詩の中にしかない私の家は。
家は眠り、風の中で夢見る
突然訪れたマストになる喜び。
繊細な体が震えるそのように、
家も震える、船も震える。
カモメが一羽飛ぶ、もう一羽、もう一羽、
家はがまんできなくなって、やはり飛び立つ。
ああ、いつか家は森になるだろう、
その木陰に私は泉を見つけるだろう、
そこでは水音だけが唯一のしずけさ。
(Eugénio de Andrade, Metamorfoses da casa)
果物の静物画(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
1
キイチゴの朝の血が
愛するためにリネンの白を選ぶ。
2
輝きと甘さにみちた朝は
その純粋な顔をリンゴへと伏せる。
3
オレンジにおいて太陽と月が
手をつないで眠る。
4
葡萄のひとつぶひとつぶは覚えている
夏の日々それぞれの名前を。
5
ザクロの中に私は愛する
炎の芯のやすらぎを。
(Eugénio de Andrade, Natureza-morta com frutos)
キイチゴの朝の血が
愛するためにリネンの白を選ぶ。
2
輝きと甘さにみちた朝は
その純粋な顔をリンゴへと伏せる。
3
オレンジにおいて太陽と月が
手をつないで眠る。
4
葡萄のひとつぶひとつぶは覚えている
夏の日々それぞれの名前を。
5
ザクロの中に私は愛する
炎の芯のやすらぎを。
(Eugénio de Andrade, Natureza-morta com frutos)
Tuesday, 30 December 2008
雨の中の家(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
雨だ、またオリーヴの林に雨が降る。
なぜこの午後降るのかがわからない
私の母はすでに去ってしまったのに、
もうベランダに出て雨が落ちるのを見ることもない、
もう編物をする手もとから目を上げることもない、
こうたずねるために。「聞こえるかい?」
聞こえるよ、母さん、また雨だね、
雨が母さんの顔に降っている。
(Eugénio de Andrade, Casa na chuva)
なぜこの午後降るのかがわからない
私の母はすでに去ってしまったのに、
もうベランダに出て雨が落ちるのを見ることもない、
もう編物をする手もとから目を上げることもない、
こうたずねるために。「聞こえるかい?」
聞こえるよ、母さん、また雨だね、
雨が母さんの顔に降っている。
(Eugénio de Andrade, Casa na chuva)
地中海(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
ホイットマンの詩の中でのようにひとりの少年が
近づいてきて私にたずねた。草って何?
彼のまなざしと私のまなざしのあいだで空気が痛みを感じた。
他の多くの午後の陰で、私は彼に語った
地面のそばにいる蜜蜂や矢車菊のことを。
(Eugénio de Andrade, Mediterrâneo)
近づいてきて私にたずねた。草って何?
彼のまなざしと私のまなざしのあいだで空気が痛みを感じた。
他の多くの午後の陰で、私は彼に語った
地面のそばにいる蜜蜂や矢車菊のことを。
(Eugénio de Andrade, Mediterrâneo)
Monday, 29 December 2008
もう少しで見えそうだ、夏が(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
もう少しで見えそうだ、夏が。
壁の上のぱきぱきとした光、
いまにも折れようとしている小麦の茎、
記憶の廃墟で、
おそらく迷子の一匹のミツバチ、
それは海へと開かれた日。
(Eugénio de Andrade, Quase se vê daqui, o verão)
壁の上のぱきぱきとした光、
いまにも折れようとしている小麦の茎、
記憶の廃墟で、
おそらく迷子の一匹のミツバチ、
それは海へと開かれた日。
(Eugénio de Andrade, Quase se vê daqui, o verão)
こわがらなくていいからまかせてくれ(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
こわがらなくていいからまかせてくれ
きみの朝の小さな仕事を。
雲はそのままにして、
屋根の燃える埃も、
テーブルの孤独の槌音も。
私の邦は六月と九月のあいだ、
最初の雪が私を呼び止めるまで。
(Eugénio de Andrade, Podes confiar-me sem receio)
きみの朝の小さな仕事を。
雲はそのままにして、
屋根の燃える埃も、
テーブルの孤独の槌音も。
私の邦は六月と九月のあいだ、
最初の雪が私を呼び止めるまで。
(Eugénio de Andrade, Podes confiar-me sem receio)
Sunday, 28 December 2008
歌(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
今日はきみに告げようとやってきたのさ
きみを待つあのおなじみの顔に雪が降ったと。
何でもないさ、恋人よ、それは一羽の小鳥、
時の貝殻が落ちただけなのだから、
ひとしずくの涙、小舟、ひとつの単語が。
ただまた一日が過ぎただけ
孤独の弓と弓のあいだを。
きみの両目の曲線が閉ざされて、
夜露のひとしずく、ただひとしずくが、
きみの掌でひそやかに死んでゆく。
(Eugénio de Andrade, Canção)
きみを待つあのおなじみの顔に雪が降ったと。
何でもないさ、恋人よ、それは一羽の小鳥、
時の貝殻が落ちただけなのだから、
ひとしずくの涙、小舟、ひとつの単語が。
ただまた一日が過ぎただけ
孤独の弓と弓のあいだを。
きみの両目の曲線が閉ざされて、
夜露のひとしずく、ただひとしずくが、
きみの掌でひそやかに死んでゆく。
(Eugénio de Andrade, Canção)
さようなら(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
まるでひとつの嵐がきみの髪を暗くしたように、
あるいはそういったほうが良ければ、
きみの目の中のぼくの口が、
花ときみの指をくわえているかのように。
まるでひとりの盲目の子が
きみの中でつまづいているように、
ぼくは雪で話し、きみは黙らせた
きみとともにぼくが自分を見失った、その声を。
まるで夜が来てきみを連れ去ったように、
ぼくはもう飢え以外の何も感じられず、
きみにさようならといった、もはや二度と
きみの体が始めた国に戻ることなどないかのように。
まるで雲の上に雲があるかのように、
そして雲の上には完璧な海が、
あるいはそういったほうが良ければ、きみの輝く口が
ぼくの胸をゆったりと航海しているかのように。
(Eugénio de Andrade, Adeus)
あるいはそういったほうが良ければ、
きみの目の中のぼくの口が、
花ときみの指をくわえているかのように。
まるでひとりの盲目の子が
きみの中でつまづいているように、
ぼくは雪で話し、きみは黙らせた
きみとともにぼくが自分を見失った、その声を。
まるで夜が来てきみを連れ去ったように、
ぼくはもう飢え以外の何も感じられず、
きみにさようならといった、もはや二度と
きみの体が始めた国に戻ることなどないかのように。
まるで雲の上に雲があるかのように、
そして雲の上には完璧な海が、
あるいはそういったほうが良ければ、きみの輝く口が
ぼくの胸をゆったりと航海しているかのように。
(Eugénio de Andrade, Adeus)
Saturday, 27 December 2008
ざわめき(エウジェニオ・デ・アンドラーデ)
目が覚めたのは
羽のざわめきのせい。
おそらくこの午後が
飛び立ちたいと願っているのだろう。
地面から立ち上がるのは
生きている何か、
それは私に与えられなかった
赦しのようだ。
おそらく何もない。
あるいはただ閉ざされた
午後のひとつのまなざし
それが鳥。
だがそれは飛べない、飛ばない。
(Eugénio de Andrade, Rumor)
羽のざわめきのせい。
おそらくこの午後が
飛び立ちたいと願っているのだろう。
地面から立ち上がるのは
生きている何か、
それは私に与えられなかった
赦しのようだ。
おそらく何もない。
あるいはただ閉ざされた
午後のひとつのまなざし
それが鳥。
だがそれは飛べない、飛ばない。
(Eugénio de Andrade, Rumor)
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